【質問】急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫の違い<症状・原因・治療・予防を西洋医学・鍼灸・栄養学から解説>


Contents
患者さまからの質問
「ボクシング:意識不明だった神足茂利さん死去、2日の試合後に急性硬膜下血腫に…昨年2月の穴口一輝さんに続くリング禍」というニュースを見ました。
急性硬膜下血腫はどんな病気ですか?
どういう症状が出る?
どんな人がなりやすい?
治療法・対処法・予防法は?
急性ではない硬膜下血腫ってあるんですか?
急性と、急性じゃない場合、何が違うんですか?
職業によって、なりやすい病気ってありますか?
スポーツによって、なりやすい病気ってありますか?
回答
質問ありがとうございます。
以下に、急性硬膜下血腫について西洋医学・鍼灸医学・栄養学の3つの観点と生理学的解釈を交えて、症状・診断・治療・予後・予防を詳細にまとめます。
疾患の定義と種類
西洋医学的定義
- 急性硬膜下血腫 ( Acute Subdural Hematoma ) は、脳を覆う硬膜とくも膜の間に急速に血液がたまる外傷性頭蓋内出血です。
- 主に**架橋静脈 ( bridging veins ) **や硬膜動脈が損傷して発生します。
- 発症から72時間以内を「急性」、3日~2週間程度を「亜急性」、2週間以降を「慢性」と分類します。
急性でない硬膜下血腫
- 亜急性硬膜下血腫:出血速度は急性ほど速くないが、数日~1週間で症状が進行。
- 慢性硬膜下血腫:主に高齢者や抗凝固療法中の人に多く、軽微な頭部外傷後、数週間~数か月かけて血液が被膜化・再出血を繰り返し、徐々に脳を圧迫します。
主な原因とリスク ( なりやすい人 )
急性型
- 強い頭部外傷 ( ボクシング、ラグビー、交通事故 )
- 頭蓋骨骨折を伴う場合も多い
- 若年~中年男性に多い ( 格闘技・接触スポーツ従事者 )
慢性型
- 高齢者 ( 脳萎縮で静脈が引き伸ばされて破れやすい )
- 抗凝固薬・抗血小板薬内服中
- 慢性アルコール依存症 ( 脳萎縮 + 凝固障害 )
症状
急性型
- 発症直後は意識清明でも数時間以内に急速悪化 ( lucid interval )
- 頭痛・吐き気・嘔吐
- 片麻痺 ( 片側の手足が動かない )
- 瞳孔不同 ( 患側散大 )
- 意識障害 → 昏睡
慢性型
- 頭痛・軽い麻痺・歩行障害
- 認知症様の症状や性格変化
- 徐々に進行
診断基準 ( 西洋医学 )
- 頭部CT:高吸収域 ( 急性 ) 、等吸収〜低吸収 ( 慢性 )
- MRI:慢性や亜急性で有用
- 臨床症状と外傷歴
治療法・対処法
急性型
- 救急外科手術が必須
- 開頭血腫除去術
- 穿頭血腫吸引術
- 頭蓋内圧管理 ( 高張食塩水・マンニトール )
- 呼吸・循環管理
慢性型
- 穿頭ドレナージで排血
- 再発防止のため生活指導
予後
- 急性型は予後不良率が高く、手術しても死亡率50%以上
- 高齢者や重度意識障害例ではさらに予後悪化
- 慢性型は適切に治療すれば回復良好だが再発あり ( 10〜20% )
予防法
急性型
- ヘッドギアやプロテクターの着用
- 格闘技・接触スポーツでの安全ルール徹底
- 頭部打撲後の経過観察 ( 特に数時間~1日 )
慢性型
- 転倒予防 ( バランス訓練・下肢筋力維持 )
- 抗凝固薬の適正管理
- 飲酒習慣の見直し
職業・スポーツと発症リスク
- 高リスク職業:建設業、高所作業、警察・軍隊、プロスポーツ選手 ( 特に格闘技・ラグビー・アメフト )
- 高リスクスポーツ:ボクシング、総合格闘技、ラグビー、アイスホッケー、スキー・スノボ、BMX
鍼灸医学的解釈
- 外傷による「瘀血 ( おけつ ) 」:頭部の経絡 ( 督脈・陽経 ) で気血の流れが阻滞
- 外傷直後は「実証」 ( 熱・腫れ・痛み ) 、慢性化すると「虚証」 ( 脳気不足 )
- 治療例:
- 急性期:救命が優先だが、術後リハに百会・風池・太衝・合谷などで気血巡行促進
- 慢性期:脾腎補益 ( 脾腎陽虚予防 ) 頭部血流促進
栄養学的アプローチ
- 急性期:外科手術と栄養管理 ( 高タンパク・高カロリーで創傷治癒促進 )
- 慢性期・予防:
- ビタミンK ( 納豆・青菜 ) で凝固因子合成
- ビタミンC・E・ポリフェノールで血管強化
- DHA・EPAで脳保護
- 過度な飲酒を避ける ( 凝固異常と脳萎縮を防ぐ )
生理学的解釈
- 外傷により架橋静脈内皮細胞が破壊 → 血液が硬膜下に流出
- 血腫内で凝固カスケード ( 凝固因子VII, X, トロンビン ) 活性化
- マクロファージがヘモグロビン分解 → ヘモジデリン沈着
- 慢性化では血腫膜の新生血管がもろく再出血 ( VEGF過剰発現 )
- 頭蓋内圧上昇で脳幹圧迫 → 呼吸・循環中枢障害
例題シナリオ
- 急性型例:ボクサーが試合中に頭部へ強打 → 数分は意識明瞭 → 試合後に激しい頭痛と嘔吐 → 数時間後に昏睡 → CTで急性硬膜下血腫 → 緊急開頭術
- 慢性型例:70歳男性が1か月前に転倒 → 最近、歩行時ふらつきと記憶力低下 → CTで慢性硬膜下血腫 → 穿頭ドレナージ後、症状改善
急性・慢性硬膜下血腫の比較 ( 予防策付き拡張版 )
東洋医学・鍼灸治療の現場からひと言
今回の「急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫の違い<症状・原因・治療・予防を西洋医学・鍼灸・栄養学から解説>」は、いかがでしたか?
実は、文章中にある例題シナリオで書いた70歳男性の慢性型例は、ホリス治療院での体験例です。
70歳男性は「めまいと頭がぼんやりする」という主訴で来院されましたが、異常を感知して、病院受診をすすめました。
病院退院後、体調管理に鍼灸治療をして、後遺症もなく元気に通常の生活に戻られました。
問診では、頭をどこかにぶつけた等々の頭部打撲の話を聞き取れませんでした。
高齢者で、高血圧等々があり、抗凝固療法中の方は、ちょっとぶつけただけでも硬膜下血種を引き起こしている可能性もありますので、注意が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
