【質問】アナフィラキシーショックとは?


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患者さまからの質問
アナフィラキシーショック。
過去にハチに刺されたことのある人がまたハチに刺されるとショック症状を起こす、と聞いたことがあります。
ハチ、エビ、蕎麦など、アナフィラキシーショックを起こしやすいとも聞いたことがあります。
外部から体内に入るとショック起こすのですか?
アナフィラキシーショックを起こしやすいものはなんですか?
逆に起きにくいものはなんですか?
花粉症でアナフィラキシーショックは起きますか?
アレルギーとは違うのですか?
アナフィラキシーショックについて詳しく知りたいです。
アナフィラキシーショックの詳細解説
アナフィラキシーショックは、急激に進行する全身性のアレルギー反応であり、生命を脅かす可能性がある緊急事態です。
以下、発生機序、症状、治療法、予後、予防法を詳しく解説します。
1. 発生機序
アナフィラキシーショックは、免疫グロブリンE ( gE ) 依存性の過敏反応により引き起こされます。
以下のメカニズムで発生します。
①アレルゲンの侵入
アレルゲンの侵入 |
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アレルゲン ( 例:食物[ナッツ、エビ・カニ] 、薬剤 [ペニシリン]、蜂毒など ) が体内に入る。 |
初回暴露では症状は出ず、IgE抗体がB細胞によって産生され、肥満細胞 ( マスト細胞 ) や好塩基球の表面に結合する。 |
- アレルゲン ( 例:食物[ナッツ、エビ・カニ] 、薬剤 [ペニシリン]、蜂毒など ) が体内に入る。
- 初回暴露では症状は出ず、IgE抗体がB細胞によって産生され、肥満細胞 ( マスト細胞 ) や好塩基球の表面に結合する。
②再暴露によるマスト細胞の脱顆粒
再暴露によるマスト細胞の脱顆粒 |
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再度同じアレルゲンに暴露されると、アレルゲンがIgEと結合し、マスト細胞や好塩基球が活性化。 |
ヒスタミン、トリプターゼ、ロイコトリエン、プロスタグランジン、PAF ( 血小板活性化因子 ) などの化学メディエーターが放出される。 |
これにより、血管拡張、血圧低下、気管支収縮、血管透過性亢進が引き起こされる。 |
- 再度同じアレルゲンに暴露されると、アレルゲンがIgEと結合し、マスト細胞や好塩基球が活性化。
- ヒスタミン、トリプターゼ、ロイコトリエン、プロスタグランジン、PAF ( 血小板活性化因子 ) などの化学メディエーターが放出される。
- これにより、血管拡張、血圧低下、気管支収縮、血管透過性亢進が引き起こされる。
③血圧低下・ショック状態の発生
血圧低下・ショック状態の発生 |
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ヒスタミン → 血管拡張 → 血圧低下 |
ロイコトリエン → 気道収縮 → 呼吸困難 |
PAF ( 血小板活性化因子 ) → 血管透過性↑ → 血管内の液体が組織へ漏出 → 血圧低下 |
- ヒスタミン → 血管拡張 → 血圧低下
- ロイコトリエン → 気道収縮 → 呼吸困難
- PAF ( 血小板活性化因子 ) → 血管透過性↑ → 血管内の液体が組織へ漏出 → 血圧低下
この結果、血液循環不全が起こり、ショック状態に陥る。
2. 主要な症状
アナフィラキシーの症状は、数分~30分以内に急速に進行し、複数の臓器系統に影響を及ぼします。
臓器系統 | 症状 |
---|---|
皮膚 | じんましん、紅潮、かゆみ、血管浮腫 ( 目や唇の腫れ ) |
呼吸器 | 喉の締め付け感、喘鳴 ( ゼーゼー音 ) 、呼吸困難 |
循環器 | 血圧低下、頻脈、不整脈、ショック |
消化器 | 嘔吐、下痢、腹痛 |
神経系 | めまい、意識障害、けいれん |
3. 治療法 ( アナフィラキシーの管理 )
最も重要な治療は「エピネフリン ( アドレナリン ) 」の早期投与 です。
遅れると致命的な転帰を取る可能性が高くなります。
①エピネフリン ( アドレナリン ) の投与
エピネフリン ( アドレナリン ) の投与 |
---|
**筋肉内注射 ( IM ) **が第一選択 ( 大腿前外側 ) |
作用 α作用 ( 血管収縮 ) → 血圧上昇、血管透過性低下 ( 浮腫軽減 ) β1作用 ( 心拍数・収縮力↑ ) → 心拍出量増加 β2作用 ( 気管支拡張 ) → 呼吸改善 |
- **筋肉内注射 ( IM ) **が第一選択 ( 大腿前外側 )
- 作用
- α作用 ( 血管収縮 ) → 血圧上昇、血管透過性低下 ( 浮腫軽減 )
- β1作用 ( 心拍数・収縮力↑ ) → 心拍出量増加
- β2作用 ( 気管支拡張 ) → 呼吸改善
例題
例題:40歳の男性 |
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ピーナッツバターを食べた直後に喉の違和感を感じ、じんましんが出現。 |
↓ |
その後、急激な呼吸困難と意識低下を認めたため、救急隊が到着。 |
↓ |
エピネフリン0.3mg IMを投与すると、10分後に血圧が回復し、呼吸困難が改善。 |
ある40歳の男性が、ピーナッツバターを食べた直後に喉の違和感を感じ、じんましんが出現。
その後、急激な呼吸困難と意識低下を認めたため、救急隊が到着。
エピネフリン0.3mg IMを投与すると、10分後に血圧が回復し、呼吸困難が改善。
②補助療法
補助療法 |
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酸素投与 ( SpO₂ 90%以下なら実施 ) |
輸液 ( 血圧低下時に静脈ライン確保 ) |
抗ヒスタミン薬 ( じんましんや皮膚症状を抑える ) |
ステロイド ( 反応遅延型アナフィラキシー予防 ) |
- 酸素投与 ( SpO₂ 90%以下なら実施 )
- 輸液 ( 血圧低下時に静脈ライン確保 )
- 抗ヒスタミン薬 ( じんましんや皮膚症状を抑える )
- ステロイド ( 反応遅延型アナフィラキシー予防 )
4. 予後と合併症
予後と合併症 |
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適切な治療が行われれば予後は良好。 |
二相性アナフィラキシー ( 最初の発作後6~12時間以内に再発する ) があるため、少なくとも4~6時間の経過観察が推奨される。 |
- 適切な治療が行われれば予後は良好。
- 二相性アナフィラキシー ( 最初の発作後6~12時間以内に再発する ) があるため、少なくとも4~6時間の経過観察が推奨される。
5. 予防法
①アレルゲンの特定と回避
アレルゲンの特定と回避 |
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食物アレルギーの回避 ( 成分表示の確認 ) |
薬剤アレルギーの確認 ( ペニシリン、NSAIDsなど ) |
ハチ刺され防止 ( アウトドア時の注意 ) |
- 食物アレルギーの回避 ( 成分表示の確認 )
- 薬剤アレルギーの確認 ( ペニシリン、NSAIDsなど )
- ハチ刺され防止 ( アウトドア時の注意 )
②エピペン ( 自己注射型エピネフリン)の携帯
エピペン ( 自己注射型エピネフリン)の携帯 |
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過去にアナフィラキシーを経験した人は、エピペンを処方されることが多い。 |
使い方 ①青いキャップを外す ②太ももの前外側に強く押し当て、10秒間保持 ③使用後はすぐに救急車を呼ぶ |
- 過去にアナフィラキシーを経験した人は、エピペンを処方されることが多い。
- 使い方
- 青いキャップを外す
- 太ももの前外側に強く押し当て、10秒間保持
- 使用後はすぐに救急車を呼ぶ
③免疫療法
免疫療法 |
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特定のアレルゲンに対する減感作療法 ( 例:蜂毒免疫療法 ) は、リスクの高い患者に適応。 |
- 特定のアレルゲンに対する減感作療法 ( 例:蜂毒免疫療法 ) は、リスクの高い患者に適応。
6. アナフィラキシーショックの詳細解説まとめ
項目 | ポイント |
---|---|
発生機序 | IgE依存性過敏反応、ヒスタミン・ロイコトリエン放出 |
症状 | 皮膚、呼吸器、循環器、消化器、神経系の多臓器症状 |
治療 | エピネフリンIMが最優先、酸素、輸液、抗ヒスタミン、ステロイド |
予後 | 早期治療で良好だが、二相性アナフィラキシーに注意 |
予防 | アレルゲン回避、エピペン携帯、減感作療法 |
アナフィラキシーショックは、迅速な対応が生死を分けるため、適切な知識と対処法を理解しておくことが重要です。
日本におけるアナフィラキシーショックの原因となる食物は、年齢層によって異なります。
以下に、各年齢層別の主要な原因食物とその割合をまとめたグラフを示します。
年齢層 | 原因食物 | 割合 (%) |
---|---|---|
0歳 | 鶏卵 | 61.1 |
牛乳 | 24.0 | |
小麦 | 11.1 | |
1-2歳 | 鶏卵 | 31.7 |
木の実類 | 24.3 | |
魚卵 | 13.0 | |
3-6歳 | 木の実類 | 41.7 |
魚卵 | 19.1 | |
落花生 | 12.5 | |
7-17歳 | 甲殻類 | 20.2 |
木の実類 | 19.7 | |
果実類 | 16.0 | |
18歳以上 | 小麦 | 19.7 |
甲殻類 | 15.8 | |
果実類 | 12.6 |
*注: 木の実類にはクルミ、カシューナッツ、アーモンドなどが含まれます。朝日新聞+2環境省+2日本語教育の会+2
このデータは、消費者庁が実施した「令和3年度食物アレルギーに関する調査研究」の結果を基にしています。 環境省
また、全年齢層を通じてショック症状を引き起こした原因食物の上位5品目とその割合は以下のとおりです。環境省+1日本語教育の会+1
原因食物 | 割合 (%) |
---|---|
鶏卵 | 33.4 |
牛乳 | 18.6 |
木の実類 | 13.5 |
小麦 | 8.8 |
落花生 | 6.1 |
*注: 木の実類の内訳では、クルミが最も多く、全体の過半数を占めています。 朝日新聞+1環境省+1
これらのデータは、日本における食物アレルギーの傾向を示しており、特に木の実類 ( ナッツ類 ) のアレルギーが増加していることがわかります。
*出典:消費者庁「令和3年度食物アレルギーに関する調査研究」
アレルギーとアナフィラキシーショックの違い
1. 定義の違い
項目 | アレルギー | アナフィラキシーショック |
---|---|---|
定義 | 免疫系が本来無害な物質 ( アレルゲン ) に過剰に反応する現象 | アレルギー反応が全身性・重篤に進行し、生命を脅かすショック状態 |
重症度 | 軽度~中等度 ( 局所的 ) | 重篤 ( 全身性、ショック ) |
関与する免疫細胞 | マスト細胞、好塩基球、好酸球、T細胞 | マスト細胞、好塩基球 ( 大量脱顆粒 ) |
主なメディエーター | ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン | ヒスタミン ( 大量 ) 、PAF ( 血小板活性化因子 ) 、サイトカインストーム |
血圧への影響 | なし~軽度 | 急激な血圧低下 ( ショック ) |
治療 | 抗ヒスタミン薬、ステロイド | エピネフリン ( アドレナリン ) |
2. 発生機序の違い
アレルギー反応のメカニズム
アレルギーは 「Ⅰ型過敏反応 ( 即時型 ) 」 に分類され、IgE抗体が関与します。
感作フェーズ ( 初回アレルゲン暴露 ) |
---|
抗原提示細胞 ( APC ) がアレルゲンを認識し、T細胞に提示。 |
Th2細胞が活性化 → IL-4, IL-5, IL-13 を分泌 → B細胞がIgE産生。 |
IgEがマスト細胞や好塩基球のFcεRI受容体に結合し、「感作」 完了。 |
感作フェーズ ( 初回アレルゲン暴露 )
- 抗原提示細胞 ( APC ) がアレルゲンを認識し、T細胞に提示。
- Th2細胞が活性化 → IL-4, IL-5, IL-13 を分泌 → B細胞がIgE産生。
- IgEがマスト細胞や好塩基球のFcεRI受容体に結合し、「感作」 完了。
再暴露フェーズ ( 2回目以降のアレルゲン暴露 ) |
---|
アレルゲンがIgEに架橋 → マスト細胞の脱顆粒。 |
ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンが放出。 |
局所的なアレルギー症状 ( じんましん、鼻水、くしゃみ、軽度の呼吸困難 ) 。 |
再暴露フェーズ ( 2回目以降のアレルゲン暴露 )
- アレルゲンがIgEに架橋 → マスト細胞の脱顆粒。
- ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンが放出。
- 局所的なアレルギー症状 ( じんましん、鼻水、くしゃみ、軽度の呼吸困難 ) 。
アナフィラキシーショックのメカニズム
アレルギーと基本的な機序は同じですが、違いは 「メディエーター放出量」 と 「全身性の血管透過性亢進」 です。
gE架橋による過剰なマスト細胞活性化 |
---|
大量のヒスタミン → 血管拡張、血管透過性増加 → 血圧低下 ( ショック ) |
PAF ( 血小板活性化因子 ) → 内皮細胞が緩み、血漿が漏出 → 浮腫・血管性ショック |
ロイコトリエン → 強い気管支収縮 → 呼吸困難 |
IgE架橋による過剰なマスト細胞活性化
- 大量のヒスタミン → 血管拡張、血管透過性増加 → 血圧低下 ( ショック )
- PAF ( 血小板活性化因子 ) → 内皮細胞が緩み、血漿が漏出 → 浮腫・血管性ショック
- ロイコトリエン → 強い気管支収縮 → 呼吸困難
サイトカインストーム |
---|
IL-6, TNF-α などの炎症性サイトカインが全身で分泌され、DIC ( 播種性血管内凝固 ) や多臓器不全を引き起こす。 |
サイトカインストーム
- IL-6, TNF-α などの炎症性サイトカインが全身で分泌され、DIC ( 播種性血管内凝固 ) や多臓器不全を引き起こす。
東洋医学・鍼灸治療からひと言
今回の「アナフィラキシーショックとは?」いかがでしたか?
蜂に刺されたときやお薬でも、アナフィラキシーショックを引き起こす場合もありますが、今回は食べ物を中心に説明しました。
アナフィラキシーショックという生命が危険になるような強く急性のものではなく、慢性的なアレルギーの原因にもなりえる食物など自分やご家族の身体の変化に注目して食べていきたいですね。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
