外陰部壊死 ( えし ) 性筋膜炎はどんな病気?<西洋医学的&鍼灸医学的視点で鍼灸師が教えます>


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患者さまからの質問
https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/202504150000571.html
式秀部屋の序二段力士:若戸桜 ( わかとざくら ) の澤田剛 ( さわだ・つよし ) さんが14日午後2時43分に茨城県の病院で死去したと発表した、33歳だった。
死因は「外陰部壊死 ( えし ) 性筋膜炎」と発表された。
このような記事を見ました。
どのような病気ですか?
どんな人がなりやすい?
予兆はある?
罹患したときの対処法は?
ならないための対策は?
回答
外陰部壊死性筋膜炎 ( Fournier壊疽 ) は、非常に重篤で進行の早い感染性の壊死性疾患であり、早期治療を要する救急疾患です。
特に男性の会陰部 ( 陰嚢や肛門周辺 ) から発症しやすく、急速に筋膜や皮下組織を壊死させていきます。
どのような病気か ( 西洋医学的定義 )
名称
- 外陰部壊死性筋膜炎 ( Fournier’s Gangrene )
- 壊死性筋膜炎の特殊型で、会陰部・陰部・下腹部に限局した壊死性感染症
名称 |
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外陰部壊死性筋膜炎 ( Fournier’s Gangrene ) |
壊死性筋膜炎の特殊型で、会陰部・陰部・下腹部に限局した壊死性感染症 |
原因菌
- 多種類の嫌気性菌・好気性菌の混合感染
- 例:大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、クロストリジウム属など
原因菌 |
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多種類の嫌気性菌・好気性菌の混合感染 |
例:大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、クロストリジウム属など |
進行
- 感染→組織の血流障害→壊死→毒素や炎症性サイトカインの全身拡散
- 数時間~数日で全身性敗血症に至るケースも多く、致死率は20~40%に達する
進行 |
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感染 → 組織の血流障害 → 壊死 → 毒素や炎症性サイトカインの全身拡散 |
数時間~数日で全身性敗血症に至るケースも多い 致死率は20~40%に達する |
どんな人がなりやすいか
以下のような免疫力低下状態・慢性疾患をもつ人に多く発症します。
リスク因子 | 説明 |
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糖尿病 | 血流障害と免疫低下により感染が進行しやすい |
肥満 | 皮膚の擦れや湿潤が細菌増殖の温床に |
アルコール依存症 | 栄養不良や肝機能低下で免疫が抑制される |
高齢者 | 自浄作用の低下、代謝機能低下 |
免疫抑制薬の使用 | 抗がん剤、ステロイド、免疫抑制剤など |
予兆はあるのか
早期発見が難しいことが多いですが、次のような初期症状が見られることがあります。
- 陰嚢や会陰部の 強い痛み・腫脹・熱感
- 皮膚が 赤黒く変色、のちに壊死性に ( 紫~黒 )
- 悪臭のある分泌物
- 発熱、寒気、全身倦怠感 ( →敗血症の兆候 )
主な初期症状 |
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陰嚢や会陰部の 強い痛み・腫脹・熱感 |
皮膚が 赤黒く変色、のちに壊死性に ( 紫~黒 ) |
悪臭のある分泌物 |
発熱、寒気、全身倦怠感 ( →敗血症の兆候 ) |
※痛みの割に皮膚の変化が少ないことがあり、見逃されやすい。
罹患したときの対処法 ( 西洋医学的 )
緊急入院・集中治療が必要
対処法 | 内容 |
---|---|
抗菌薬投与 | 広域スペクトル抗菌薬 ( カルバペネム系など ) を点滴 |
デブリードマン ( 壊死組織切除 ) | 感染源を除去する手術が不可欠 |
場合によっては陰嚢摘出やストーマ造設 | 命を守るためには不可避なことも |
ICUでの集中治療 | 敗血症・多臓器不全を防ぐ |
ならないための対策
予防策 | 具体的内容 |
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糖尿病などの持病管理 | 血糖コントロールを良好に保つこと |
清潔の保持 | 陰部・会陰部の通気と衛生管理 |
早期受診 | 陰部に違和感があればすぐ泌尿器科・皮膚科受診 |
栄養管理と免疫強化 | ビタミン、亜鉛、プロバイオティクスの摂取 |
便秘や下痢の予防 | 肛門周囲の炎症は感染の起点となることがある |
鍼灸医学の捉え方例
鍼灸医学的視点
病因病機 ( 東洋医学 )
- 「湿熱下注 ( しつねつかちゅう)」:湿気と熱が下焦 ( 下腹部 ) に停滞して毒となる
- 「瘀血 ( おけつ ) 」:血の巡りが悪く、膿毒が生じる
- 「腎虚+脾虚」:免疫や代謝を担う腎・脾の弱り
湿熱下注 ( しつねつかちゅう) | 湿気と熱が下焦 ( 下腹部 ) に停滞して毒となる |
瘀血 ( おけつ ) | 血の巡りが悪く、膿毒が生じる |
腎虚+脾虚 | 免疫や代謝を担う腎・脾の弱り |
治療方針 ( 急性期以外の予防や回復期 )
- 清熱解毒・活血化瘀・補腎健脾
- 使用経穴:気海、関元、三陰交、血海、大腸兪、腎兪、足三里など
清熱解毒・活血化瘀・補腎健脾 |
使用経穴:気海、関元、三陰交、血海、大腸兪、腎兪、足三里など |
※急性壊死性筋膜炎の急性期は鍼灸適応外 ( 必ず病院受診 )
身体の中で起きていること
炎症性サイトカインの暴走
- TNF-α、IL-6、IL-1β などが急上昇し、局所から全身へ波及 → サイトカインストーム
TNF-α、IL-6、IL-1β などが急上昇し ↓ 局所から全身へ波及 ↓ サイトカインストーム |
好中球とNETs ( Neutrophil Extracellular Traps )
- 感染に応じて好中球がNETsを形成 → 病原体を捕捉
- しかし過剰形成で自己組織も傷つける
感染に応じて好中球がNETsを形成 ↓ 病原体を捕捉 |
しかし過剰形成で自己組織も傷つける |
細菌毒素による細胞障害
- クロストリジウムなどは**ガス産生・壊死毒素 ( αトキシン ) **を放出し、筋膜を破壊
クロストリジウムなどは**ガス産生・壊死毒素 ( αトキシン ) **を放出 ↓ 筋膜を破壊 |
低酸素・酸化ストレス
- 微小血流障害により酸素供給が断たれ、ミトコンドリア機能が低下 → 細胞死と壊死が連鎖
微小血流障害により酸素供給が断たれ、ミトコンドリア機能が低下 ↓ 細胞死と壊死が連鎖 |
症例で学ぶ:若戸桜さんの場合 ( 推定 )
有名人の方の病気に対するコメントは、するべきでないのかもしれません。
というのも、実際の報道が正しいのかどうか?、その患者さまがどのような持病をお持ちなのか?、また生活習慣など知りえないからです。
しかし、ケーススタディとして考えてみますね。
- 若くして発症:背景に「代謝性疾患 ( 糖尿病予備群 ) 」「陰部外傷」「多忙による免疫低下」などがあった可能性
- 力士は高体重・高蛋白食・下肢や会陰部への摩擦ストレスが多く、実は発症リスクが高い
若くして発症 背景に「代謝性疾患 ( 糖尿病予備群 ) 」「陰部外傷」「多忙による免疫低下」などがあった可能性 |
力士は高体重・高蛋白食・下肢や会陰部への摩擦ストレスが多い 実は発症リスクが高い |
まとめ
項目 | 要点 |
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疾患名 | 外陰部壊死性筋膜炎 ( Fournier壊疽 ) |
発症 | 急速に進行する細菌感染症 ( 致死率高 ) |
リスク | 糖尿病、肥満、免疫低下、高齢、陰部の外傷など |
治療 | 速やかな抗菌薬+外科的デブリードマンが鍵 |
予防 | 陰部の清潔、栄養、基礎疾患管理が重要 |
鍼灸 | 慢性期・回復期・予防に補助的適応あり |
東洋医学・鍼灸治療の現場からひと言
「外陰部壊死 ( えし ) 性筋膜炎はどんな病気?<西洋医学的&鍼灸医学的視点で鍼灸師が教えます>」は、いかでしたか?
外陰部壊死性筋膜炎の背景には、糖尿病 ( 予備軍を含め ) があります。
太りすぎ、特に、糖質過多の食生活は、あらゆる病気の背景になりやすいですね。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
