高齢者が痰で咳き込む原因とは?<呼吸リハビリ・誤嚥防止体操を鍼灸師が解説>


Contents
患者さまからの質問
90歳のおじいちゃんは、いつも咳をします。
痰が絡むようで、ゴホゴホと咳をします。
お年寄りは、痰が絡む咳が出やすいのですか?
なんで痰が絡むのですか?
僕たち子供と何が違うんですか?
回答
「90歳のおじいちゃんが痰がからんでゴホゴホ咳をする理由」について、西洋医学、鍼灸医学、栄養学的観点から、それぞれの仕組みを使ってわかりやすく説明します。
まず結論
高齢になると、気道の自浄機能 ( 痰を外に出す力 ) や免疫、粘膜の潤いが低下するため、痰がからみやすく、咳が出やすくなります。
これは、子どもと違って「身体のバリア機能」が衰えているからです。
西洋医学的な解釈
なぜ高齢者は痰が出やすいのか?
- 気道の繊毛運動の低下:気道の中には「繊毛 ( せんもう ) 」というホコリや病原体を外に出す毛があり、加齢でこの動きが悪くなる
- 喉や肺の筋力低下:咳をするには筋力が必要、筋力が落ちると、痰をしっかり出せず、からんだままになる
- 飲み込み機能の低下 ( 誤嚥 ) :唾液や食べ物が気道に入りやすくなり、防御反応として咳が出る ( =誤嚥性咳嗽 )
- 慢性気管支炎やCOPDの可能性:長年の喫煙歴がある人では、慢性的に気道が炎症を起こし、痰が増えて咳が続くことがある
なぜ高齢者は痰が出やすいのか? | |
---|---|
気道の繊毛運動の低下 | 気道の中には「繊毛 ( せんもう ) 」というホコリや病原体を外に出す毛があり、加齢でこの動きが悪くなる |
喉や肺の筋力低下 | 咳をするには筋力が必要 筋力が落ちると、痰をしっかり出せず、からんだままになる |
飲み込み機能の低下 ( 誤嚥 ) | 唾液や食べ物が気道に入りやすくなり、防御反応として咳が出る ( =誤嚥性咳嗽 ) |
慢性気管支炎やCOPDの可能性 | 長年の喫煙歴がある人では、慢性的に気道が炎症を起こし、痰が増えて咳が続くことがある |
生理学的なしくみ
- マクロファージ ( 免疫細胞 ) の活動性低下 ⇒ 異物を処理しきれず、痰として残る
- ムチン ( MUC5ACなど ) の過剰分泌または粘性変化 ⇒ 粘りが強くなり、排出しづらくなる
- 炎症性サイトカイン ( IL-6、TNF-αなど ) の慢性上昇 ⇒ 軽い気道炎症が続き、咳や痰の産生を促す
生理学的なしくみ | |
---|---|
マクロファージ ( 免疫細胞 ) の活動性低下 | 異物を処理しきれず、痰として残る |
ムチン ( MUC5ACなど ) の過剰分泌 または粘性変化 | 粘りが強くなり、排出しづらくなる |
炎症性サイトカイン ( IL-6、TNF-αなど ) の慢性上昇 | 軽い気道炎症が続き、咳や痰の産生を促す |
🩺症状・診断基準・治療法
項目 | 内容 |
---|---|
主な症状 | ゴホゴホという湿性咳嗽、痰 ( 白〜黄色 ) 、ときに微熱 |
診断に必要な検査 | 聴診、胸部X線、肺機能検査、喀痰培養、内視鏡 |
治療法 | 去痰薬 ( ムコダイン、カルボシステイン ) 、吸入療法、抗生物質 ( 感染時 ) 、誤嚥防止のリハビリ |
鍼灸医学的な解釈
鍼灸学的病因・病理
- 高齢者は「肺・脾・腎の虚 ( きょ ) 」が進みやすい ⇒ 痰湿 ( たんしつ ) が溜まりやすく、咳となって現れます。
漢方的病態 | 意味 |
---|---|
肺気虚 | 肺の気の巡りが弱く、咳や呼吸が浅くなる |
痰湿内盛 | 痰が体内にたまり、気道にからみ咳が出る |
腎精虚 | 生命エネルギーが不足し、呼吸を調整できない |
鍼灸的治療のアプローチ
- 肺の気を補う:太淵 ( たいえん ) 、肺兪 ( はいゆ )
- 痰を捌く:中府 ( ちゅうふ ) 、豊隆 ( ほうりゅう )
- 腎精を補う:腎兪 ( じんゆ ) 、太谿 ( たいけい )
- 温灸での補腎・補肺も効果的
鍼灸的治療のアプローチ |
---|
肺の気を補う:太淵 ( たいえん ) 、肺兪 ( はいゆ ) |
痰を捌く:中府 ( ちゅうふ ) 、豊隆 ( ほうりゅう ) |
腎精を補う:腎兪 ( じんゆ ) 、太谿 ( たいけい ) |
温灸での補腎・補肺も効果的 |
栄養学的な解釈
高齢者で痰が増える栄養的背景
- 脱水傾向 → 粘液が濃くなる ( =痰がドロッとする )
- たんぱく質不足 → 粘膜や免疫が弱くなる
- ビタミンA・C・Eの不足 → 粘膜保護・抗酸化力が低下
脱水傾向 | 粘液が濃くなる ( =痰がドロッとする ) |
たんぱく質不足 | 粘膜や免疫が弱くなる |
ビタミンA・C・Eの不足 | 粘膜保護・抗酸化力が低下 |
おすすめの栄養素と食品
栄養素 | 働き | 食品例 |
---|---|---|
ビタミンA | 粘膜の再生 | レバー、卵黄、人参 |
ビタミンC | 抗酸化・免疫 | ブロッコリー、柿、キウイ |
たんぱく質 | 粘液・免疫構成 | 魚、豆腐、鶏肉 |
水分 | 痰を薄くする | 白湯、味噌汁、スープ |
子どもとの違い
項目 | 高齢者 | 子ども |
---|---|---|
気道の繊毛運動 | 弱い | 活発 |
筋力 ( 咳嗽力 ) | 弱い | 強い |
粘膜の水分保持 | 減少 | 潤っている |
免疫力 | 低下 | 発達中だが強い部分もあり |
誤嚥リスク | 高い | 低い ( 例外あり ) |
予防法・生活でできること
日常でできる予防
- こまめな水分補給 ( 白湯が◎ )
- 口腔内・鼻腔の保湿と清潔
- 部屋の湿度を50〜60%に保つ
- 咳や痰が出やすい朝は加温・加湿してから活動
- 喉を鍛える嚥下・呼吸リハビリ
日常でできる予防 |
---|
こまめな水分補給 ( 白湯が◎ ) |
口腔内・鼻腔の保湿と清潔 |
部屋の湿度を50〜60%に保つ |
咳や痰が出やすい朝は加温・加湿してから活動 |
喉を鍛える嚥下・呼吸リハビリ |
まとめ
項目 | 解釈 |
---|---|
西洋医学 | 筋力・繊毛運動・免疫力の低下で痰が残る |
鍼灸医学 | 肺脾腎の虚、痰湿の内生で咳痰が出る |
栄養学 | 粘膜維持・免疫に必要な栄養が不足しがち |
子どもとの違い | 自浄力・咳反射・粘膜保護力の違い |
高齢者の呼吸機能の改善と誤嚥防止<呼吸リハビリ法と誤嚥防止体操>
折角の質問ですので、掘り下げて、ここでは、高齢者の呼吸機能の改善と誤嚥防止のために効果的な、呼吸リハビリ法と誤嚥防止体操を、西洋医学・リハビリ学的観点からわかりやすく説明します。
東洋医学・鍼灸治療の現場からひと言
今回の「高齢者が痰で咳き込む原因とは?<呼吸リハビリ・誤嚥防止体操を鍼灸師が解説>」は、いかがでしたか?
咳き込みやすい人は、誤嚥性肺炎のリスクも高くなります。
ちょっと工夫 ( 体操など ) で、大きな違いを生みますので、日々の習慣になれば幸いです。
いつも最後までお読みいただきありがとうございます。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
