あなたは、ピンクリボン運動をご存知でしょうか?
1980年代に、アメリカで、乳癌で亡くなられた患者さんの遺族によって、
「このような悲劇が繰り返されないように願いを込めて作ったリボン」
から始まった乳癌の啓蒙運動です。
ピンクリボン運動が広がっているように、乳癌にかかる女性は、数年前には、30人に1人と言われていましたが、最近では15人に1人と急増しています。
乳癌患者さんは、20歳代から徐々に増え始め、30歳代で急増、40~50歳代がピークになります。
しかし、早期で発見できれば、治りやすい癌と言えます。
その早期乳癌で、手術をしない治療法がどんどん進歩していますので、ご紹介します。
セカンドオピニオンとは
セカンドオピニオンとは、今かかっている医師である主治医以外の第2の医師に意見を求めることです。
また提示されている治療と違う治療法について、主治医に相談することもセカンドオピニオンになります。
90%以上が治ると言わている早期乳癌では、このセカンドオピニオンが特に大切になります。
それは、選ぶ治療法で、その後の生活が変わってくる可能性があるからです。
第2の医師や違う治療法を相談するときに、患者さん側に手術をしない治療法の知識があれば、スムーズに、そして納得できる、より良い治療法が見つかると思います。
セカンドオピニオンを受けるまでの5つの流れ
- ご自身の病気のこと、治療方法など医療情報を集める
- セカンドオピニオンで聞きたいことを、紙に書く
- セカンドオピニオン先(病院)を決める
- 通院中の病院で、紹介状と検査情報をもらう
- セカンドオピニオン先を受診する
1.ご自身の病気のこと、治療方法など医療情報を集める
今回の乳癌に関しては、本やネットなど情報がたくさんある病気です。
しかし、手術方法など詳しく知ることは、ちょっと難しいかもしれませんが、病気のこと、治療法などを出来る限り調べましょう。
知っているのと、知らないのでは、大きな違いを生むことになります。
特に、乳癌などでは、手術をした後の人生が長くなりますので、後悔しないようにしたいものです。
2.セカンドオピニオンで聞きたいことを、紙に書く
調べた医療情報をもとに、ご自身の生活環境や人生観に基づいて、自分自身に適した治療方法を選択できるように、しっかり紙に書き出しましょう。
その際に、付箋などを使用すると、整理するときに便利です。
3.セカンドオピニオン先(病院)を決める
2つの流れがあります。
- 今通っている主治医の先生に、セカンドオピニオンを受けたい旨、そして試してみたい治療法などを伝え、専門医を紹介してもらう。
- 知り合い、本やネットなどで、病院を探す。
4.通院中の病院で、紹介状と検査情報をもらう
通院中の病院で、セカンドオピニオン先を紹介してもらった場合は、スムーズに検査情報などをもらえると思います。
しかし、ご自身で病院を調べた場合は、主治医の先生が情報を渡すことをためらうことがありますが、セカンドオピニオンを受けたいという希望をしっかりと伝えて全ての情報を受け取りましょう。
5.セカンドオピニオン先を受診する
受診予約をする際に、セカンドオピニオンとして受診する旨を伝えておくとスムーズです。
乳癌と違うしこり
繊維線種
20~30歳代の若い女性に多く、しこりは弾力性があり、丸い形で、指で押すと動く。こぶし大まで大きくなる人もいますが、痛みはありません。
乳腺症
30~40歳代の女性に多く、両方の乳房に出来る人が多いです。しこりは平べったく、痛みがあります。
月経の前になるとしこりが大きくなり、痛みも増すこともあります。
月経が終わるとしこりは小さく、痛みも軽くなります。
乳腺炎
乳腺が細菌に感染して起こります。乳房が赤く晴れ、熱感があり、ズキズキした痛みを伴います。
発熱や寒気があることもあります。
乳管内乳頭腫
閉経前後の人に多く、比較的乳房の中心部にできます。しこりは、硬く境界がハッキリしています。
乳頭の近くにある太い乳管野中にできる良性腫瘍です。乳頭から血の混じった分泌物がでるのが特徴的です。
乳癌の種類
乳癌は、乳腺にできます。乳腺は、乳頭を中心にして放射状に15~20個並んでいます。
乳癌の約90%は、乳管にできる乳管癌から発生します。
約5~15%は、小葉にできる小葉癌です。
早期癌は、一般的には、癌の大きさが1㎝、重さ1gです。
他の癌よりも乳癌はゆっくりと進行するのが特徴で、1㎝になるには、7年ほどかかると言われています。
乳癌学会では、乳癌を16種類に分類していますが、大きく分けると「非浸潤癌」と「浸潤癌」の2種類になります。
非浸潤癌
癌細胞が乳管や小葉にとどまっている乳癌です。
転移することがほぼありません。治療すれば確実に治る乳癌と言えます。
非浸潤癌は、非浸潤性乳管癌が全体の約7%、非浸潤性小葉癌が全体の0.1%とされています。
浸潤癌
癌細胞が、乳管や小葉を包んでいる基底膜の外に及んでいる乳癌です。
乳癌の全体の約80%で、浸潤性乳管癌と特殊型に分類されます。
浸潤性乳管癌は以下のようなものがあります。
1.乳頭腺管癌
乳癌全体の約20%で、正常細胞に近く、リンパ節に転移しにくい癌です。
2.充実腺管癌
乳癌全体の約20%で、周囲を圧迫しながら、乳管の中を広がっていく癌です。
リンパ節に転移しやすさは、乳頭腺管癌と硬癌の間くらいです。
3.硬癌
乳癌全体の約40%で、しこりにならず、乳管の外側に散らばるようにできる癌です。
増殖スピードが速く、リンパ節に転移しやすい癌です。
4.特殊型
ごく稀に見られる癌です。
粘液癌、髄様癌、浸潤小葉癌、腺様のう胞癌、扁平上皮癌、紡錘細胞癌など12タイプがあります。
乳癌の臨床病理分類 TNM分類
国際がん連合(UICC)が定めているステージ(病期)判定をするTNM分類を紹介します。
T(Tumor)
原発腫瘍、つまり癌が最初に発生した部位で、どれだけ浸潤増殖しているかをT1~T4に分けます。
N(Node)
領域リンパ節のことで、リンパ節転移の程度を表します。
癌が転移している臓器によって、N0~N1、またはN0~N3に分けます。
乳癌の場合は、N0~N3に分けます。
M(Metastasis)
血液によって転移する血行性転移などの遠隔転移の有無を表します。
M0~M1に分けます。
この3つの組み合わせで、乳癌の病期分類をステージ0~ステージ4の5段階に決めます。
他の臓器への転移
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転移なし
(MO)
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転移なし
(MO)
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転移なし
(MO)
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転移なし
(MO)
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転移あり
(M1)
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リンパ節への転移
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転移なし
(MO)
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腋窩リンパ節転移
可能性あり
(N1)
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腋窩リンパ節転移
可能性あり
(N2)
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鎖骨上下リンパ節
転移あり
(N3)
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しこりなし(TO)
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ー
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ⅡA
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ⅢA
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ⅢC
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Ⅳ
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しこりの大きさが2㎝以下(TO)
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Ⅰ
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ⅡA
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ⅢA
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ⅢC
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Ⅳ
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しこりの大きさが2~5㎝(T1)
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ⅡA
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ⅡB
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ⅢA
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ⅢC
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Ⅳ
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しこりの大きさが5㎝以下(T2)
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ⅡB
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ⅢA
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ⅢA
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ⅢC
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Ⅳ
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皮膚浸潤、胸壁固定(T4)
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ⅢB
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ⅢB
|
ⅢB
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ⅢC
|
Ⅳ
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乳癌の手術
乳癌の治療の第一選択肢は、手術になりますが、一般的には、手術後に放射線治療を行い、そのあとに薬物治療を行います。
局所治療として、手術と放射線治療があります。
全身治療として、薬物療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的治療)があります。
乳房温存術
ステージ0期、ステージ2期、ステージ3期で選択可能な乳房を残す手術である乳房温存術の手術法をご紹介します。
1.乳房円状部分切除術
しこりとその周辺の組織だけを円形に切除する方法です。
2.乳房扇状部分切除術
しこりを中心に扇状に切除する方法です。
以上の乳房温存手術は、全身麻酔で行われ、通常1~2時間の手術時間です。
また、しこりが大きい場合には、手術前に化学療法を行い、しこりを小さくしたから乳房温存術をする「術前化学療法」が選択される場合もあります。
乳房切除術(全摘手術)
しこりが大きかったり、多発していたりと乳房温存術では取りきれないときに、乳房全体を切除する「乳房切除術」が行われます。
以前の乳房切除術では、大胸筋や小胸筋、リンパ節などすべてを切除するハルステッド手術が行われていましたが、今では、大胸筋を残す「胸筋温存乳房切除術」が一般的になっています。
また、最近では、乳腺だけを切除する「乳腺部分(全)切除術」など、手術後に自然な乳房ができるように、美容面にも考慮された手術法が選択されています。
乳房切除術は、全身麻酔で行われ、2~3時間の手術時間です。
手術しない乳癌治療法
トモセラピー・・・最新放射線治療
今までの放射線治療は、がん細胞にだけ放射線をかけることが難しかったのですが、最新のコンピューター技術により、がん病巣だけを狙い撃ちできるようになりました。
放射線は、細胞のDNAを傷つけるため、細胞が壊れますので、正常細胞へ放射線があたることで、副作用がありました。しかし、このトモセラピーでは、がん病巣だけを狙えることから、副作用が少なくなりました。
また、複数の癌にも同時に放射線を当てることが可能になったのも大きな利点です。
RFA・・・ラジオ波熱焼灼療法
RFA(ラジオ波熱焼灼療法)は、全身麻酔をして、乳輪から針を刺し、がん病巣にラジオ波を流すことで、熱を発生させて針周辺の温度を60~70度まで上昇させます。
癌細胞は、42度以上で死滅しますので、このラジオ波の熱で癌細胞を死滅させることができます。
準備を含めて30分程度の治療時間になります。
RFAは、しこりが2cm以下、リンパ節への転移がないなどの初期の乳癌に限りますが、しこりが大きい時には、RFA前に化学療法で、癌を小さくしてから行うこともあります。
HIFU(ハイフ:集束超音波療法)
HIFU(集束超音波療法)は、超音波を体外から照射し、熱を発生させることで、癌細胞を死滅させることができます。
鎮痛薬を飲むだけで、麻酔を必要ありません。
癌細胞の大きさに関係なく治療でき、繰り返し治療が可能で、副作用が少ないなどのメリットがあります。
凍結療法(クライオサージェリー)
がんさいぼ細胞は、マイナス20度で死滅しはじめます。
この凍結療法は、癌細胞に針を刺し、液体窒素を送って、癌細胞を冷凍し、死滅させます。
血管塞栓治療
癌細胞にも栄養が必要です。その栄養は近くの動脈から新生血管を引き寄せていることが分かっています。新生血管とは、動脈と静脈が絡まったポンプ状の血管です。
この新生血管が密集すると癌が増殖しますし、またこの新生血管を通して癌細胞が移動、転移しやすくなります。
血管塞栓治療は、この新生血管のポンプに薬を注入し、癌に栄養が流れるのを防ぎます。栄養が絶たれると癌は縮小し、いずれ死滅します。
DC-BAK療法
DC-BAK療法は、DC(樹状細胞)療法とBAK療法とを組み合わせた免疫療法です。
私たちの免疫機能は、私たちが癌にならないように、発生した癌細胞を見つけ、処理しています。その免疫機能を高めることで癌治療につなげようとするのが免疫療法です。
DC(樹状細胞)は、その免疫細胞の一つで、癌細胞を取り込みます。癌細胞を取り込んだDC(樹状細胞)は、その癌細胞の情報をDC細胞の表面に提示します。その提示をみて、免疫細胞のリンパ球が活性化したり、癌細胞を攻撃します。
BAKは、生物反応剤という意味で、癌細胞から身体を守っているリンパ球を培養し、患者さんに戻します。
DC療法で乳癌細胞に目印をつけ、BAK療法で、強力で数も増えたリンパ球が乳癌細胞を攻撃することになります。
まとめ
「早期乳癌で、セカンドオピニオンに聞くべき手術しない治療法のまとめ」はいかがだったでしょうか?
知っているのと、知らないのとでは、大きな違いがあります。
乳癌になってから、あわてないように、そして早期乳癌は約90%が治ると言われていますので、しっかり情報を整理したいものですね。
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