[ 腎臓がん ] 分子標的薬の種類とメカニズム ( 西洋医学 + 生理学的解釈 )

腎細胞がんは化学療法や放射線療法に耐性を持つため、分子標的薬が重要な役割を担います。
主に「血管新生阻害」と「細胞増殖抑制」の2方向で作用します。
Contents
主な分子標的薬
薬剤名 | 分類 | 標的 | メカニズム ( 分子生物学的 ) |
---|---|---|---|
スニチニブ ( Sunitinib ) | チロシンキナーゼ阻害薬 ( TKI ) | VEGFR, PDGFR, c-KIT | 腫瘍血管新生を阻害し、腫瘍への栄養供給を断つ。 細胞増殖シグナルも遮断。 |
パゾパニブ ( Pazopanib ) | TKI | VEGFR, PDGFR, c-KIT | VEGF経路抑制 → 腫瘍内血流低下 → 増殖抑制。 |
アキシチニブ ( Axitinib ) | TKI | VEGFR | VEGFシグナルを高選択的に阻害し、腫瘍の血管を縮小。 |
カボザンチニブ ( Cabozantinib ) | TKI | VEGFR, MET, AXL | 血管新生阻害 + 転移に関わるMET / AXL経路の抑制。 |
レンバチニブ ( Lenvatinib ) | TKI | VEGFR, FGFR, PDGFR | 血管新生阻害 + 線維芽細胞成長因子経路も抑制。 |
ベバシズマブ ( Bevacizumab ) | 抗VEGF抗体 | VEGF | VEGF分子を直接中和 → 新規血管形成を阻止。 |
免疫チェックポイント阻害薬 ( ニボルマブなど ) | 抗PD-1抗体 | PD-1 | T細胞の免疫抑制を解除し、がん細胞攻撃を活性化。 |
分子生物学的背景 腎細胞がんの多くで VHL遺伝子変異 が起き、HIF ( 低酸素誘導因子 ) が異常に安定化 → VEGFやPDGFなど血管新生因子が過剰発現 → 腫瘍血管が異常に発達。
このループを断ち切るのが分子標的薬です。
鍼灸の具体的アプローチ ( 症状緩和・QOL改善 )
目的
- 疼痛・倦怠感・食欲不振・不眠・免疫低下の改善
- 治療副作用 ( 吐き気、末梢神経障害など ) の緩和
- 精神的安定と全身調整
よく使われる経穴例
症状 | 経穴例 | 理由 ( 鍼灸理論 ) |
---|---|---|
腰背部痛 | 腎兪 ( BL23 ) 、志室 ( BL52 ) | 腎気を補い、局所循環改善 |
倦怠感 | 足三里 ( ST36 ) 、気海 ( CV6 ) | 気血を補い、消化吸収力を高める |
吐き気 | 内関 ( PC6 ) 、中脘 ( CV12 ) | 胃の気を整え、悪心を抑える |
不眠 | 神門 ( HT7 ) 、安眠 ( EX-HN22 ) | 心腎を調和し、精神安定 |
免疫低下 | 大椎 ( GV14 ) 、百会 ( GV20 ) | 陽気を高め、免疫機能調整 |
栄養学的食事プラン ( 予防・治療後の再発抑制 )
基本方針
- 腎機能を守りつつ、がん再発リスクを下げる抗酸化・抗炎症食
- 高血圧・肥満を防ぐ
- 水分補給を適正に行う ( 医師の指示範囲 )
推奨食品
- 抗酸化食品:緑黄色野菜 ( ブロッコリー、ほうれん草 ) 、ベリー類、トマト ( リコピン )
- オメガ3脂肪酸:青魚 ( サバ、イワシ ) 、亜麻仁油
- 良質タンパク質:豆腐、納豆、鶏胸肉、白身魚 ( 腎機能低下時は量調整 )
- 食物繊維:大麦、海藻、きのこ類 ( 腸内環境改善 )
避けたい食品
- 過剰な塩分 ( 加工食品、漬物 )
- 高脂肪肉、揚げ物
- 過剰な動物性たんぱく ( 腎機能低下時 )
- 清涼飲料水・糖質過多食品
もうちょっと深堀りして、がん全般に共通する 免疫を中心にした考え方 を、西洋医学・鍼灸医学・栄養学・生理学的観点から整理します。
がんを「免疫の視点」から見ると、発生・進行・治療・予防のすべてに深く関わります。
がんと免疫の基本的関係 ( 西洋医学 + 生理学 )
私たちの体では、日々数千〜数万個もの異常細胞が生まれますが、免疫システムがこれを監視し排除しています。
この働きを がん免疫監視機構 と呼びます。
がん免疫の3段階 ( 免疫編集 )
- 排除期 ( Elimination )
- NK細胞、キラーT細胞、マクロファージなどが異常細胞を殺傷。
- 分子生物学的には、がん抗原v例:変異p53、RAS変異など ) を提示した細胞をT細胞が認識し、パーフォリンやグランザイムで破壊。
- 平衡期 ( Equilibrium )
- 生き残ったがん細胞と免疫が拮抗し、増殖が抑えられた状態。数年〜数十年続くことも。
- 逃避期 ( Escape )
- がん細胞が免疫回避機構 ( PD-L1発現増加、MHC消失、免疫抑制サイトカイン分泌など ) を獲得し、免疫の監視から逃れ増殖。
免疫低下とがん発生リスク
免疫が弱まると、異常細胞の排除力が落ち、がん化の可能性が高まります。
主な免疫低下要因
- 加齢 ( 免疫老化:T細胞数・機能低下 )
- 慢性炎症 ( 生活習慣病、喫煙、過食 )
- 栄養不足 ( 特にタンパク質・亜鉛・ビタミンD欠乏 )
- ストレス・睡眠不足
- 過度な紫外線、化学物質、放射線曝露
- ウイルス感染 ( HBV、HCV、HPV、EBVなど )
治療における免疫活用 ( 西洋医学 )
がん治療では近年、「免疫療法」が急速に進歩しています。
主な免疫療法
治療 | 作用機序 |
---|---|
免疫チェックポイント阻害薬 ( 抗PD-1、抗CTLA-4 ) | がんが発現するPD-L1などによる免疫抑制を解除し、T細胞を再活性化。 |
CAR-T細胞療法 | 患者T細胞を遺伝子改変し、がん抗原を特異的に攻撃。 |
がんワクチン | がん抗原を投与し、特異的免疫応答を誘導。 |
サイトカイン療法 ( IL-2, IFN-α ) | 免疫細胞全体の活性化。 |
鍼灸医学的免疫アプローチ
鍼灸では「正気 ( せいき ) 」=体を守るエネルギーを高めることが免疫強化につながると考えます。
免疫活性化のポイント
- 補気:脾胃を整え栄養吸収を高める ( 例:足三里、気海、中脘 )
- 扶陽:腎陽を温めて生命力を支える ( 例:腎兪、関元、大椎 )
- 疏肝:ストレスによる気滞を解消し免疫抑制を防ぐ ( 例:太衝、内関 )
- 調和陰陽:自律神経と内分泌系のバランスを取る
研究では、鍼灸刺激がNK細胞活性やサイトカイン分泌 ( IL-2, IFN-γ ) を増やす可能性が示唆されています。
栄養学的免疫強化
免疫細胞は、タンパク質や特定のビタミン・ミネラルを原料にして作られ、機能します。
免疫に重要な栄養素
- タンパク質:免疫細胞・抗体の材料 ( 魚、鶏胸肉、大豆 )
- オメガ3脂肪酸:炎症制御 ( 青魚、亜麻仁油 )
- ビタミンD:免疫調整 ( 鮭、卵黄、日光浴 )
- ビタミンC / E:抗酸化・免疫細胞保護 ( 柑橘、ナッツ )
- 亜鉛:T細胞成熟 ( 牡蠣、レバー )
- 食物繊維:腸内細菌バランス改善 → 腸管免疫強化 ( 海藻、きのこ、雑穀 )
免疫中心の予防戦略 ( がん全般 )
- 日常生活
- 十分な睡眠 ( 7時間前後、深夜0時前に入眠 )
- 定期的な運動 ( ウォーキング+筋トレ )
- ストレスコントロール ( 呼吸法、瞑想 )
- 定期健診
- 血液検査、画像検査で早期発見
- 炎症負荷の軽減
- 禁煙、節酒
- 抗酸化・抗炎症食品の摂取
- 腸内環境の最適化
- 発酵食品 ( 納豆・みそ ) 、食物繊維で腸免疫を強化
例題:免疫を中心としたがん予防プラン
50歳女性・家族にがん既往あり
- 栄養:朝に味噌汁 + 焼き魚、昼に野菜たっぷり玄米弁当、間食にナッツとみかん
- 運動:週3回30分ウォーキング + 軽い筋トレ
- 鍼灸:月2回、足三里・腎兪・太衝で免疫・ストレス調整
- 習慣:就寝23時、週1回ヨガで副交感神経優位化
→ NK細胞活性・自律神経バランスが改善し、免疫力維持に寄与。
付随記事
「がん予防・再発予防の免疫強化1か月プログラム」 を、 西洋医学 ( 免疫生理 ) + 鍼灸医学 ( 気血津液の調整 ) + 栄養学 ( 免疫栄養 ) + 生理学的解釈 の統合型で作ります。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
