【質問】 揉み返しとは?<鍼灸師が本当のこと話します>


肩をマッサージしてもらうと、翌朝に揉み返しがきて痛いです。
揉み返しってなんですか? どういう原理ですか?
揉み返しくる人・こない人の違いは?
痛くなったらどうしたらいいですか?
また、揉み返しにならないためにはどうすればいいですか?
Contents
回答
「揉み返し」について、詳しく解説します。
最後に鍼灸師の私の意見を書きますね。
苦情・問い合わせがあると思いますが、あくまでも私の意見です。
揉み返しとは? ( 定義 )
「揉み返し」とは、マッサージや指圧などの刺激を受けた後、数時間~翌日に筋肉痛や違和感、重だるさ、痛みなどが出現する反応です。
単なる「筋肉痛」とは異なり、過度な外力や不適切な刺激によって筋線維や周囲組織に微細な損傷・炎症が起きることが原因と考えられています。
西洋医学的な視点揉で「揉み返し」の原理を考える
原因:筋損傷と炎症
マッサージによって筋肉が強く押されたり、こすられたりすることで
- 筋繊維が微細に断裂 ( =ミクロトラウマ )
- 筋膜や腱膜が損傷
- 筋周囲の毛細血管が破れ、内出血や浮腫を生じる
もみ返しの原因:筋損傷と炎症 |
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筋繊維が微細に断裂 ( =ミクロトラウマ ) |
筋膜や腱膜が損傷 |
筋周囲の毛細血管が破れ、内出血や浮腫を生じる |
その結果、炎症反応が起こり、プロスタグランジン・ブラジキニン・ヒスタミンなどの痛み関連物質が放出され、知覚神経を刺激して痛みを感じるようになります。
鍼灸医学的な視点で「揉み返し」の原理を考える
気血津液 ( きけつしんえき ) の流れに注目
- 過度なマッサージにより「気血の巡りが急激に乱される」と経絡の乱れが一時的に起こります。
- また、外邪 ( 風寒湿 ) が一気に体内に侵入することで「邪が留まり、正気が痛む」とされます。
気血津液 ( きけつしんえき ) の流れに注目 |
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過度なマッサージにより「気血の巡りが急激に乱される」と経絡の乱れが一時的に起こる |
また、外邪 ( 風寒湿 ) が一気に体内に侵入することで「邪が留まり、正気が痛む」とされる |
鍼灸的な捉え方
- 「按じて急に散ずれば、気乱れて痛む ( 傷気 ) 」 → つまり「急激な刺激により内在する虚実のバランスが崩れたことによる痛み」と捉えます。
- 特に「肝血虚・脾虚湿盛・瘀血体質」の人は揉み返しを起こしやすい傾向があります。
鍼灸的な捉え方 |
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「按じて急に散ずれば、気乱れて痛む ( 傷気 ) 」 ↓ つまり「急激な刺激により内在する虚実のバランスが崩れたことによる痛み」と捉える |
特に「肝血虚・脾虚湿盛・瘀血体質」の人は揉み返しを起こしやすい傾向がある |
揉み返しが来る人・来ない人の違い
揉み返しが来やすい人 | 揉み返しが来にくい人 |
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筋肉が硬い 老廃物が溜まりやすい ( 肩こり・慢性疲労 ) | 筋肉が柔らかい 血流・リンパの流れが良い |
水分不足・睡眠不足・栄養不良などで修復力が低い | 代謝が高い 炎症抑制力 ( 抗酸化力 ) がある |
慢性的な瘀血体質・冷え性・虚弱体質 ( 東洋的 ) | バランスの取れた「気血津液」が巡っている体質 |
揉み返しになってしまったら? ( 対処法 )
西洋医学的アプローチ
- アイシング ( 24時間以内 ) :炎症反応を抑えるため、冷却が効果的 ( 20分程度 )
- 軽いストレッチや安静:筋肉の緊張を緩和する
- NSAIDsの一時的服用 ( ロキソニンなど ) :炎症と痛みを抑制
- 栄養補給 ( ビタミンC・E 、タウリン、クエン酸 ) :炎症修復の促進
西洋医学的アプローチ |
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アイシング ( 24時間以内 ):炎症反応を抑えるため、冷却が効果的 ( 20分程度 ) |
軽いストレッチや安静:筋肉の緊張を緩和する |
NSAIDsの一時的服用 ( ロキソニンなど ) :炎症と痛みを抑制 |
栄養補給 ( ビタミンC・E 、タウリン、クエン酸 ) :炎症修復の促進 |
鍼灸的アプローチ
- 瘀血散じる経穴に鍼灸:膈兪、血海、三陰交など
- お灸で気血を調える:特に脾腎虚寒タイプには温灸が有効
- 温かい生姜湯・よもぎ湯で温める:内外から巡りを改善
鍼灸的アプローチ |
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瘀血散じる経穴に鍼灸:膈兪、血海、三陰交など |
お灸で気血を調える:特に脾腎虚寒タイプには温灸が有効 |
温かい生姜湯・よもぎ湯で温める:内外から巡りを改善 |
揉み返しを防ぐには?
施術側の工夫
- 強すぎる圧迫を避け、表層→深層へ徐々にアプローチする手技
- 呼吸に合わせてリズムをとる
- 痛気持ちいいレベルにとどめる
施術側の工夫 |
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強すぎる圧迫を避け、表層→深層へ徐々にアプローチする手技 |
呼吸に合わせてリズムをとる |
痛気持ちいいレベルにとどめる |
受け手側の工夫
- 事前に水分を十分摂る ( 筋膜水分量UPで損傷リスク減 )
- 睡眠をしっかりとる ( 成長ホルモンと修復系の活性化 )
受け手側の工夫 |
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事前に水分を十分摂る ( 筋膜水分量UPで損傷リスク減 ) |
睡眠をしっかりとる ( 成長ホルモンと修復系の活性化 ) |
まとめ
視点 | 揉み返しの原因 | 反応 | 対策 |
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西洋医学 | 筋損傷・炎症性サイトカイン | 痛み・腫れ | 冷却・抗炎症・栄養補給 |
鍼灸医学 | 気血の乱れ・瘀血 | 痛み・重だるさ | 鍼灸・温灸・漢方的処置 |
東洋医学・鍼灸治療の現場からひと言
今回の「 揉み返しとは?<鍼灸師が本当のこと話します>」は、いかがだったでしょうか?
実は、今回の揉み返しや好転反応について、よく聞かれます。
というのも他院での施術後に揉み返しなどの副反応があった場合に「好転反応」と聞かせれている患者さまが多いようです。
上記のまとめになりますが、一時的に炎症を起こし、その炎症を抑えるための生体反応を引き起こすことで、凝りや痛みを治す力を発揮させるという考えの方もいらっしゃるようですし、一理あります。
鍼灸師の本音
しかしながら、鍼灸師としての臨床歴38年 ( 令和7年時点 ) の私の考え方では、一時的にでも身体を痛めるような治療は避けるべきだと考えております。
特に、敏感な患者さまやお子様の施術では、身体を痛めるような刺激の強さは不向きです。
また、揉み返しになるような強刺激は、悪循環になると考えます。
強いマッサージに慣れている患者さまは、独特な筋肉の質になり、症状がひどくなる方が多いように見受けられます。
それは、強刺激の治療は、最初は痛みを強く感じますが、刺激に慣れていくにしたがって、気持ち良くなります。
そして、より強い刺激を求めるようになります。
しかし、強い刺激には限界がきます。
例えば、マッサージですと、若い時には、術者の体重をかけた強い刺激に耐えられる骨や筋肉があったとしても、数年、数十年と時間が経ちますと患者さまもお年を重ねます。
すると、若い時のような強刺激に骨や筋肉が耐えることができずに、押す力に耐えられずに骨折や怪我につながる恐れがあります。
しかし、患者さまは、強い刺激を求め、筋肉の質も悪くなっています。
強く押してほしいのに、強く押せない状態になります。
私は、これを「蛇の生殺し」療法のようだと感じます。
痛みや凝りでつらい時には、一刻でも早く治したいというお気持ちは分かりますが、長い目で見ることも大切です。
マッサージは、按摩指圧マッサージ師という国家資格者しかできないと心得ていますが、巷では、無資格でマッサージを行う店舗があるようですし、チェーン店化されて大々的に営業をされています。
無資格でアロママッサージ、タイマッサージなど標榜していたり、ほぐし、リラクゼーションと銘打っている場合もあるようですが、やはり、国歌資格を保有しているか?いないのか?しっかり見極めていきたいですね。
何よりも大切な身体です。
その身体を預ける相手を吟味する必要があるように思います。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
