百日咳に対する東洋医学・鍼灸治療の捉え方

大流行の兆しがある百日咳について「百日咳が大流行中<百日咳の症状や治療法・鍼灸治療的アプローチについて解説>」 の記事を書きました。
百日咳に対する鍼灸医学での捉え方を書いていきます。
西洋医学は、病名を診断することで、治療法が決まります。
しかし、鍼灸医学では、病名診断ではなく、患者さまの身体の状態を重要視し、これを症 ( 病症 ) と呼びます。
Contents
東洋医学的・鍼灸治療からみて解釈
東洋医学・鍼灸医学は、西洋医学とはまったく違った理論体系で成り立っています。
鍼灸医学的病証 | 解説 |
---|---|
①風邪犯肺証 ( ふうじゃはんはいしょう ) | 外感風邪が肺に侵入し、肺の気を塞ぐ → 咳が止まらない |
②肺熱咳嗽証 ( はいねつがいそうしょう ) | 肺に熱がこもり、津液が損傷 → 黄痰・乾いた咳 |
③陰虚肺燥証 ( いんきょはいそうしょう ) | 慢性化により肺陰が消耗 → 乾咳・口渇・長期化する咳 |
④痰熱壅肺証 ( たんねつようはいしょう ) | 痰と熱が結びつき気道を閉塞 → 発作的な咳と嘔吐 |
鍼灸治療では、肺は「気」を主り、宣発・粛降作用により外邪から身体を守る役割があるとされます。
鍼灸治療的アプローチの基本
- 外邪の排出 ( 風邪・熱 )
- 肺気の疏通 ( 粛降作用の回復 )
- 痰の除去
- 気陰の調整
を目標にします。
鍼灸治療の呼吸器に対する作用メカニズム
繰り返しになりますが、鍼灸治療と西洋医学とでは、理論体系が違いますから、鍼灸治療的な診断をして、鍼灸を施すことが大切です。
しかしながら、現代科学での解釈も必要と思いますので、ちょっと詳しくなりますが、参考までに記しますね。
これからの更なる研究が待たれます。
鍼灸治療と身体の変化
A. 迷走神経反射と咳中枢の調整
鍼灸は肺経や任脈上の特定の経穴を刺激することで、迷走神経系を介して脳幹の咳中枢 ( 延髄 ) に作用します。
- 特に「天突」「列欠」「肺兪」の刺激 → 迷走神経終末から求心性信号 → 延髄の咳中枢抑制
- ⇒ 発作性咳嗽の減弱、吸気性笛声の緩和
研究報告
- 刺激後、延髄内TRPV1やSubstance Pの発現が抑制されることで、咳反射閾値が上昇
B. 免疫調整作用 ( Th1/Th2バランス )
百日咳ではTh2優位 ( 抗体中心 ) 免疫が活性化しますが、鍼灸によってTh1/Th2のバランス調整が可能です。
- 経穴刺激 ( 特に肺兪・足三里 ) → 脾T細胞の再教育 → Treg細胞増加 → IL-10、TGF-β増加 → 免疫の過剰応答を抑制
- ⇒ リンパ球の異常増多 ( 百日咳毒素による ) に対する制御性T細胞のブレーキ効果
C. 気道炎症の制御:サイトカインネットワーク調整
鍼灸刺激により、気道粘膜上皮・肺胞マクロファージのIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生抑制が確認されています。
- **中府や肺兪**への刺激 → 局所の炎症性メディエーター ( NF-κB経路 ) を抑制
- ⇒ 咳嗽の軽減、痰の減少、気道粘膜の修復促進
D. 自律神経調整による呼吸リズムの回復
百日咳後期 ( 回復期 ) では、副交感神経過緊張による咳中枢過敏が持続します。
- 鍼刺激によるHRV ( 心拍変動 ) パターン変化が報告されており、副交感神経優位からバランスのとれた自律神経状態へ回復
- 特に「足三里」「内関」などの経穴は遠隔から中枢の調整機構に作用
鍼灸治療的アプローチのまとめ
観点 | 内容 |
---|---|
鍼灸治良的理解 | 肺気の失調・外邪侵入による咳嗽 |
鍼灸の役割 | 咳嗽の軽減、免疫調整、自律神経調整 |
分子レベルでの作用 | 抗炎症・抗痰・免疫強化・迷走神経刺激による咳中枢抑制 |
実践的応用 | 肺経・任脈を中心に、証に応じた選穴と施術 |
上記を目指して鍼灸治療を
観点 | 内容 |
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東洋医学的理解 | 肺気の失調・外邪侵入による咳嗽 |
鍼灸の役割 | 咳嗽の軽減、免疫調整、自律神経調整 |
分子レベルでの作用 | 抗炎症・抗痰・免疫強化・迷走神経刺激による咳中枢抑制 |
実践的応用 | 肺経・任脈を中心に、証に応じた選穴と施術 |
最後に
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