【質問】立ち寝と気絶の違いとは?<失神で倒れる原因を医学・栄養学・鍼灸から解明>


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患者さまからの質問
立っている時。
立っている時に眠くなっても、そのまま立っていられる。
けど、立っている時に気分が悪くなる or 気を失うと倒れる。
この違いって何ですか?
立ちながら寝ている時は倒れないのに、気を失うと倒れるのはなぜですか?
どちらも意識は無いのに、不思議です。
回答
とても鋭い質問です。
「立ったまま寝ているのに倒れない」のに「立っていて気を失うと倒れる」という現象の違いには、意識レベルだけでなく、脳幹・筋緊張・自律神経の状態、つまり「無意識の身体制御」が関係しています。
違いの要点:眠気 vs 失神
状態 | 意識 | 筋緊張 ( 抗重力筋 ) | 姿勢制御 | 結果 |
---|---|---|---|---|
立ちながら眠い | 低下しかけているが保たれている | 保たれている | 保たれている | 倒れない |
失神・気絶 | 急激に消失 | 弛緩 | 崩れる | 倒れる |
西洋医学的解釈
眠気 ( 立ちながら眠る )
- 大脳皮質の活動が低下して「うとうと」するが、延髄・脳幹レベルの姿勢反射・筋緊張維持は残っている
- 例:「寝不足の人が電車で立ったまま寝てしまう」
失神 ( 神経調節性失神、起立性低血圧など )
- 意識だけでなく、脳幹・延髄レベルでの反射的筋緊張も一時的にオフになる
- 原因:血圧の急激な低下 ( 脳への血流低下 )
- 結果:筋肉の支えがなくなり倒れる
診断基準 ( 神経調節性失神の例 )
- 起立後に
- 頭がふらふらする
- 視界が暗くなる
- 数秒以内に意識喪失 ( 持続数秒〜1分以内 )
- 倒れるが、横になるとすぐ回復
西洋医学的解釈 | |
---|---|
眠気 ( 立ちながら眠る ) | 大脳皮質の活動が低下して「うとうと」するが、延髄・脳幹レベルの姿勢反射・筋緊張維持は残っている。 例:「寝不足の人が電車で立ったまま寝てしまう」 |
失神 ( 神経調節性失神、起立性低血圧など ) | 意識だけでなく、脳幹・延髄レベルでの反射的筋緊張も一時的にオフになる。 原因:血圧の急激な低下( 脳への血流低下 )。 結果:筋肉の支えがなくなり倒れる。 |
診断基準 ( 神経調節性失神の例 ) | 起立後に、頭がふらふらする。 起立後に、視界が暗くなる。 起立後に、数秒以内に意識喪失 ( 持続数秒〜1分以内 )。 起立後に、倒れるが、横になるとすぐ回復。 |
生理学的解釈
眠気中の姿勢維持
- 脳幹の網様体系が抗重力筋 ( 腸腰筋、大腿四頭筋など ) に持続的に信号を送り続けている
- グリア細胞によるアデノシンの蓄積 → 大脳皮質の活動低下 ( =眠気 )
- しかし姿勢保持の「脊髄レベルの反射」は生きている
失神
- 血圧低下 → 頸動脈洞・大動脈弓の圧受容体 → 迷走神経・交感神経抑制 → 血管拡張・心拍低下 → 脳灌流量が低下
- 脳幹も酸素・ATP不足に陥る → 筋緊張消失
生理学的解釈 | |
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眠気中の姿勢維持 | 脳幹の網様体系が抗重力筋 ( 腸腰筋、大腿四頭筋など ) に持続的に信号を送り続けている。 グリア細胞によるアデノシンの蓄積 → 大脳皮質の活動低下 ( =眠気 )。 しかし姿勢保持の「脊髄レベルの反射」は生きている。 |
失神 | 血圧低下 → 頸動脈洞・大動脈弓の圧受容体 → 迷走神経・交感神経抑制 → 血管拡張・心拍低下 → 脳灌流量が低下。 脳幹も酸素・ATP不足に陥る → 筋緊張消失。 |
鍼灸医学的解釈
眠気
- 肝血虚や脾気虚の状態で、気はまだ上に昇っており、「神 ( 意識 ) は虚しているが守られている」状態
- 督脈・足太陽膀胱経が通じているため、体幹と下肢の気が姿勢を保っている
失神
- 「気逆」により気が頭から急激に引く=「厥証 ( けっしょう ) 」
- 経絡の流れが遮断され、脳に気血が届かない→筋肉が支えられず倒れる
- 関連経穴:
- 百会 ( 督脈 ) → 意識回復
- 湧泉 ( 腎経 ) → 気の上昇を促す
- 内関 ( 心包経 ) → 迷走神経系に影響
鍼灸医学的解釈 | |
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眠気維持 | 肝血虚や脾気虚の状態で、気はまだ上に昇っており、「神 ( 意識 ) は虚しているが守られている」状態。 督脈・足太陽膀胱経が通じているため、体幹と下肢の気が姿勢を保っている。 |
失神 | 「気逆」により気が頭から急激に引く=「厥証 ( けっしょう ) 」。 経絡の流れが遮断され、脳に気血が届かない→筋肉が支えられず倒れる。 関連経穴: 百会 ( 督脈 ) → 意識回復、湧泉 ( 腎経 ) → 気の上昇を促す、内関 ( 心包経 ) → 迷走神経系に影響。 |
栄養学的視点
眠気
- 低血糖・低鉄・低マグネシウム → 大脳の活動性が落ちるが、筋肉はまだ動ける
- 睡眠負債やセロトニン不足による眠気
失神
- 急激な血糖降下、鉄欠乏性貧血、脱水・電解質異常によって、脳血流が低下し倒れる
- ナトリウム、カリウム、カルシウムのバランスが筋収縮に関与
栄養学的視点 | |
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眠気維持 | 低血糖・低鉄・低マグネシウム → 大脳の活動性が落ちるが、筋肉はまだ動ける。 睡眠負債やセロトニン不足による眠気。 |
失神 | 急激な血糖降下、鉄欠乏性貧血、脱水・電解質異常によって、脳血流が低下し倒れる。 ナトリウム、カリウム、カルシウムのバランスが筋収縮に関。 |
治療・予防法
状態 | 治療 | 予防 |
---|---|---|
眠気 | 睡眠改善、食事調整、カフェインなど刺激物 | 睡眠衛生、鉄・ビタミンB群補給、腸内環境整備 |
失神 | 横になって血流改善、場合により薬物療法 ( βブロッカーなど ) | 水分・塩分摂取、圧迫ストッキング、起立前の準備運動 |
まとめ
項目 | 眠気 ( 立ち寝 ) | 失神 ( 立ち失神 ) |
---|---|---|
意識 | 徐々に低下 | 急激に消失 |
筋緊張 | 残る | 消失 |
原因 | 大脳皮質の低活動 | 脳幹への血流・酸素供給低下 |
倒れるか | 倒れない | 倒れる |
関与するシステム | 脳幹・姿勢反射維持 | 自律神経・血圧制御障害 |
東洋医学・鍼灸治療の現場からひと言
今回の「立ち寝と気絶の違いとは?<失神で倒れる原因を医学・栄養学・鍼灸から解明>」は、いかがでしたか?
毎回、面白ネタの質問をありがとうございます。
と言うことで、まじめに回答してみました。(^▽^)
私たちの生活全体で起きていることを、身体の機能として解釈してみるのって、とても楽しいのは、私だけでしょうか?
私たちの身体の中で何が起きているのかを考えるときに、物質としてとらえる西洋医学と、機能・働きからとらえる東洋医学って、「同じ山を東から登るのか?西から登るのか?」ってことかもしれません。
しかし、山をとらえようとすると両面が必要ですし、もっとたくさんの視点が必要だと思う今日この頃です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最後に
お困りのこと、質問や疑問などありましたら、ホリス治療院にお気軽にご相談下さいね。
