胃がん、胃炎の原因、ピロリ菌の感染経路、検査から除菌、副作用まで
- 胃の不快感
- 胃のもたれ
- 食欲不振
- 激しい胃痛
- 胸やけやげっぷ
などの胃の不調に、お悩みではないですか?
それは、委縮性胃炎かもしれません。
また、胃の症状がないのに、定期健診で、ピロリ菌に感染していることを指摘されていませんか?
そんなあなたに、ピロリ菌の感染原因から検査、除菌法まで詳しくお話しします。
Contents
ピロリ菌とは
胃の粘膜に生息している細菌で、ヘリコバクター・ピロリのことを一般的には、ピロリ菌と呼んでいます。
長い間、胃には、強い酸性の胃酸があるために、細菌は存在しないと思われていました。
ところが、1983年、オーストラリアの医師、ウォーレン先生によって、胃炎患者さんの胃粘膜に細菌がいることが発見されました。
その後、ウォーレン先生は、マーシャル先生とともに、この菌が胃粘膜に生息していることを証明しました。
このことは、胃に細菌(ピロリ菌)が生息できていることが医学常識では考えられないことで、いかに驚きの事実だったかということが分かります。
ピロリ菌が胃がんを引き起こす
1994年に、WHO(世界保険機関)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)が、ピロリ菌が胃がんの発がん物質であることを認定しました。
同じく1994年に、米国では、NIH(米国立衛生研究所)は、ピロリ菌を除菌することを勧める勧告をだしています。
これは、アメリカ、イギリスとハワイの3地域で行った無作為研究により、胃がん患者さんは、そうでない人よりも明らかに多くの人がピロリ菌に感染していることが分かったからです。
日本で、ピロリ菌が除菌できるようになるまで
日本でも1990年代後半に、現在の国立がん研究センターで、ピロリ菌と胃がんの関係を研究していましたが、当時はなかなかうまくいかなかったようです。
日本のピロリ菌研究の第1人者である北大名誉教授の浅香正博先生が、2001年1月から2003年7月までの3年間にわたり前向き研究を行いました。
※「異所性胃粘膜」とは、胃粘膜が胃粘膜以外の臓器にあったり、増殖したりしていることです。
ピロリ菌除菌によって、胃がんを100%予防できることでもないことも分かりました。
胃がんの「ピロリ菌原因説」を受け入れられない日本
この研究以前は、胃がんの発がん原因が、ピロリ菌感染であるとした国際がん研究機関(IARC)の認定が日本の医学界で受け入れらることはありませんでした。
それは、疫学研究(調査によって要因を明らかにする研究)で判明しても、基礎研究(メカニズムの解明をする研究)で証明されることが重要だと考えている日本医学研究者が多いからのようです。
また、海外の胃がんにおけるピロリ菌感染率が日本の感染率とは開きがあったからです。
日本では、胃粘膜がんは、”早期胃がん”と見なし、海外では、”異形成”と診断していたのです。
「ストレス原因説」に縛られて・・
そして、もっとも大きな障壁だったのは、日本では、胃潰瘍、十二指腸潰瘍は、ストレスが引き起こす「ストレス原因説」が信じられていたためです。
「ストレス原因説」にとらわれすぎて、世界の医学界で認めた「ピロリ菌原因説」は認められなかったのです。
「ストレス原因説」の発端は、1950年代の航空管制官を対象にした研究があるためですが、その後、ストレス原因説は否定されています。
しかし、現在も信じているドクターはたくさんいるように思われます。
さて、話を戻しますが、日本でも2000年11月に、胃・十二指腸潰瘍に対するピロリ菌除菌療法が保険適応になります。
このピロリ菌除菌療法の保険適応後、約10年間で、胃・十二指腸潰瘍の発症頻度は約60%も減少しました。
ピロリ菌と胃がんの関係が明らかに
ピロリ菌除菌が、胃・十二指腸潰瘍を抑えることは分かってきました。
次の研究課題は、ピロリ菌除菌と胃がんの関係です。
現在の国立研究がんセンターを中心に、「がん克服10か年戦略」と呼ばれる臨床研究が1994年に開始され、「ピロリ菌除菌による胃粘膜萎縮の発生および進展の予防に関する研究」が始まりました。
調査内容は、胃がんや胃潰瘍など病気がない5,000例で、胃粘膜萎縮の発生と進展、胃がんの発生頻度を調査健康するのを目的としたものです。
除菌したグループと除菌しないグループを比較するものだったのですが、除菌しないグループが集まらず、除菌による萎縮性胃炎の改善効果のみが証明できただけでした。
しかし、その後、他の研究も進み、2013年2月にピロリ菌感染胃炎の除菌療法が保険適応になりました。
国際がん研究機関(IARC)が、ピロリ菌が胃がんの原因物質と認めた1994年から遅れること約20年、やっと日本でも「ピロリ菌原因説」が受け入れられるようになってきました。
ピロリ菌の感染経路、原因
日本人の約半数の人が感染していると言われるピロリ菌。
1970年代の上下水道などの環境整備が整うまでは、ピロリ菌に感染する機会が多かったとされ、60歳代以上の感染率は高い傾向にあります。
しかし、その後の若い世代では感染率は下がります。
2000年生まれの感染率は、10%未満と推計されています。
実際に、中学生の学校健診で取り入れている各地方自治体があります。
2014年度では、ピロリ菌に感染している中学1年生は、5.4%、2015年度は、9.3%でした。
ピロリ菌に感染する年齢は、胃酸による防衛能力が弱い5歳未満で感染しているとされ、衛生状態のよい現在では主に、口移しなどの離乳食で伝染すると考えられています。
ピロリ菌の検査法
内視鏡をしない検査法
尿素呼気試験法
まず、診断薬を飲み、飲む前後で呼気を集めて(検査袋に息を吹きこみます)診断します。
IgG抗体検査
ピロリ菌に感染すると、抗体ができます。この抗体は血液中や尿中に存在するので、血液検査や尿検査で、この抗体の有無を調べます。
糞便中抗原測定
糞便中にピロリ菌の抗原があるかどうかを調べます。
内視鏡を使う検査法
内視鏡検査の際に、胃粘膜を少し採取して検査する方法です。
培養法
内視鏡で採取した粘膜を、5~7日間培養して調べます。
迅速ウレアーゼ試験
内視鏡で採取した粘膜を反応液を使用して調べます。
組織鏡検法
内視鏡で採取した粘膜を顕微鏡でみて調べます。
ピロリ菌除菌法は
PPI(プロトンポンプ阻害薬)と2種類の抗生物質を朝夕2回、7日間服用します。
ピロリ菌除菌の副作用は
一般的に10%前後の人に副作用が現れるとされています。
もしも、除菌療法中に気になることがあったら、主治医の先生に問い合わせましょう。
ピロリ菌除菌療法は、花粉症の人には効きにくい?
薬剤師の尾関佳代子さんが中心となり、尾関さんが勤める薬局でアンケートを行った結果を、日本内科学会英文誌に発表しています。
それは、花粉症に罹る人は、ピロリ菌除菌の成功率が下がるというものです。
メカニズムの解明はこれからですが、花粉症をお持ちの方は、ドクターとよく相談しながら、より注意深くすすめたいものです。
待たれるABC検診(胃がんリスク層別化検査)の確立
ABC検診とは、ピロリ菌感染の有無だけでなく、胃粘膜の萎縮を示す物質の値などを組み合わせ、将来胃がんに罹るリスクを判定できるようにしようとする試みです。
このABC検診でのふるい分け方法が確立できると、血液検査だけで、将来胃がんに罹るリスクが分かり、バリウム検査や内視鏡検査をしなくて済む利点があります。
ピロリ菌(IgG)抗体検査
ペプシノゲン検査
胃粘膜の萎縮の程度を調べる血液検査です。
ピロリ菌抗体検査
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ペプシノゲン検査
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A群
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陰性
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陰性
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B群
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陽性 |
陰性
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C群
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陽性
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陽性
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D群
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陰性
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陽性
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- A群:健康的。リスクは低い
- B群:消化性潰瘍に注意
- C群:胃がんのリスク高い
- D群:胃がんのリスクがより高い
このABC検診を「胃がんのリスク評価」としている場合もあるようですが、2016年末に、日本消化器がん検診学会で、
「胃がんになりやすい状態を判定する検査法であり、胃がんの定期検診は受けるように」
と注意喚起しています。
胃がん患者さんの約10%に、リスクのないA群判定の患者さんが含まれているとする報告もあり、これから精度の高いふるい分け検査が待たれています。
まとめ
「ピロリ菌除菌で胃炎改善、胃がん予防!感染原因から検査、除菌法まで 」は、いかがだったでしょうか?
ピロリ菌除菌は、繰り返す慢性胃炎の改善や胃がんの予防など、“胃”のコンディションを改善するのも狙いです。
ピロリ菌を除菌後に、胃がんを発症する人もいらっしゃいますので、除菌して安心してしまうのではなく、胃をいたわるような食生活も忘れないようにしたいものですね。
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